顧客に向けて個別にさまざまな案内を発信できるDM(ダイレクトメール )ですが、「信書」に当たる文書を定められた手段以外で送付すると違法となる場合があるのをご存知でしょうか?
今回は郵便法違反に気を付けたい「信書」についてまとめました。
「信書」とは?
画像引用元:総務省広報誌「総務省」平成26年7月号
「信書」とは、誰か特定の人物に対して宛てて送る、いわゆる「手紙」や「はがき」などを指します。
「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」と郵便法及び信書便法に規定されているもののことです。
■書状
■請求書の類
【類例】納品書、領収書、見積書、願書、申込書、申請書、申告書、依頼書、契約書、照会書、回答書、承諾書、◇レセプト(診療報酬明細書等)、◇推薦書、◇注文書、◇年金に関する通知書・申告書、◇確定申告書、◇給与支払報告書
■会議招集通知の類
【類例】結婚式等の招待状、業務を報告する文書
■許可書の類
【類例】免許証、認定書、表彰状
※カード形状の資格の認定書なども含みます。
■証明書の類
【類例】印鑑証明書、納税証明書、戸籍謄本、住民票の写し、◇健康保険証、◇登記簿謄本、◇車検証、◇履歴書、◇給与支払明細書、◇産業廃棄物管理票、◇保険証券、◇振込証明書、◇輸出証明書、◇健康診断結果通知書・消防設備点検表・調査報告書・検査成績票・商品の品質証明書その他の点検・調査・検査などの結果を通知する文書
■ダイレクトメール
文書自体に受取人が記載されている文書
商品の購入等利用関係、契約関係等特定の受取人に差し出す趣旨が明らかな文言が記載されている文章
引用元:日本郵政
「信書」を誤送した場合の罰則
現在、「信書」を送る手段として法的に認められているのは以下のようになっており、これらの配送方法以外で信書を送ると郵便法(※)に抵触する恐れがあります。
- 日本郵便・・・定型郵便、定形外郵便、レターパック、EMS、スマートレター、ミニレター
- 佐川急便・・・飛脚特定信書便
- ヤマト運輸・・信書を送れるサービスは扱っておりません
第四条(事業の独占)
会社以外の者は、何人も、郵便の業務を業とし、また、会社の行う郵便の業務に従事する場合を除いて、郵便の業務に従事してはならない。ただし、会社が、契約により会社のため郵便の業務の一部を委託することを妨げない。
(2) 会社(契約により会社から郵便の業務の一部の委託を受けた者を含む。)以外の者は、何人も、他人の信書(特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書をいう。以下同じ。)の送達を業としてはならない。二以上の人又は法人に雇用され、これらの人又は法人の信書の送達を継続して行う者は、他人の信書の送達を業とする者とみなす。
(3) 運送営業者、その代表者又はその代理人その他の従業者は、その運送方法により他人のために信書の送達をしてはならない。ただし、貨物に添付する無封の添え状又は送り状は、この限りでない。
(4) 何人も、第二項の規定に違反して信書の送達を業とする者に信書の送達を委託し、又は前項に掲げる者に信書(同項ただし書に掲げるものを除く。)の送達を委託してはならない。
第七十六条(事業の独占を乱す罪) 第四条の規定に違反した者は、これを三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
郵便法に違反した場合、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金が課せられるばかりか、企業やグループの信頼を欠くことになりかねませんので注意が必要です。
「信書」に該当するダイレクトメールとは?
では実際に「信書」扱いになってしまうダイレクトメールはどんなものがあるのでしょうか?
新聞折り込みなど不特定多数に配布することを前提として作成されるチラシやパンフレット、リーフレットのようなDMは「信書」にはなりませんが、特定顧客に宛てたDMを送付する際には「信書」に当たる文書を定められた手段以外で送付すると違法となる場合があります。
- 案内状やお知らせの文章内に受取人が記載されている
- 案内状やチラシ、パンフレット等に、受取人の商品購入履歴や購入の際に付与されるポイントなど特定の情報が記載されている
- 特定の受取人に差し出す趣旨が明らかな文言が記載されている
- 「△△化粧品ユーザーの方へ」など、商品の購入や契約関係など差出人が特定の受取人に差し出す趣旨が明らかな文言が記載されている
上記のほかにも、例えばチラシの片隅に「◯◯様、いつもありがとうございます!」のようなメモ書きを入れてしまえば、それも「信書」に該当します。
「信書」のダイレクトメールを送る方法
「信書」を送る方法としておすすめの送り方は、日本郵便の通称「普通郵便」と言われる定形郵便か定形外郵便です。
定形郵便は25g以内であれば84円、50g以内であれば94円で、信書を三つ折りサイズにして送る送料が安い送り方となっています。
定形外郵便は定形郵便よりも大きいA4サイズの三つ折りにせずにそのままの信書を送ることが出来ます。
詳しくはこちら『定形郵便物・定形外郵便物の料金(外部リンク)』
「信書」の誤送で郵便法違反になった事例
実際に、「信書」の誤送で違反になった事例は以下の通りです。
グッドウィルの郵便法違反容疑
人材派遣大手のグッドウィル(2009年12月31日付で解散)は、2007年7月、データ装備費の 返還を伝える文書約80万通を派遣スタッフ宛にヤマト運輸のメール便(当時)で送付。
この文書は、「信書」である可能性 が高い(郵便法違反)とみられていたが、グッドウィルもそれを認め、総務省に対し再発防止策を申し出たことから告発は見送られた。
埼玉県職員の郵便法違反
2009年6月、埼玉県の女性職員が「信書」に該当する文書を、ヤマト運輸のメール便(当時)で送ったところ、
その文書を受け取った男性が郵便法違反容疑で埼玉県警に告発。
捜査の結果、埼玉県と女性職員、ヤマト運輸とその男性従業員が書類送検された。
便利だからといって、「信書」に該当する文書をメール便や宅配便等で送ってしまうと、送り主に悪気がなくても、悪意をもった受取人がその事実を逆手にとってくる場合があります。
ヤマト運輸が平成27年3月末をもって旧クロネコメール便を廃止し、現在のクロネコDM便に取扱いを代えたのも『郵便法違反の認識がない利用者が容疑者になるリスクを防ぐため』といった背景があります。
まとめ
今回は「信書」の定義と事例についてご紹介しました。
総務省が発行している『知っておきたい信書のルール』では、イラストやQ&Aなど分かりやすく「信書」について記載されていますので、是非一度ご確認ください。
「信書」を理解して、安心・安全にDMを発送しましょう。