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ヤマト運輸と日本郵政が本格協業を発表|クロネコDM便とネコポスは順次終了し、新サービスへ移行

2024年問題に向けた業界再編の動き

令和5年6月19日、日本郵政の連結子会社である日本郵便とヤマトホールディングス傘下のヤマト運輸は、人手不足や物流をめぐる各種社会課題の解決、また持続可能な物流サービスの推進に向けた協業に関する基本合意書を締結したと発表しました。

要は、ドライバー不足が懸念される「2024年問題」や「環境問題」(カーボンニュートラル)の解決を目指すため、物流業界の大手2社が手を組んだということです。


  (左から)ヤマトホールディングスの長尾裕社長、
   日本郵政の増田寛也社長、日本郵便の衣川和秀社長

引用元:持続可能な物流サービスの推進に向けた基本合意について(ヤマトホールディングス株式会社)

クロネコDM便とネコポスは順次終了し、新サービスへ

今回の発表によれば、ヤマト運輸と日本郵便の本格協業に伴い、ヤマト運輸の「クロネコDM便」は「クロネコゆうメール」に、また「ネコポス」は「クロネコゆうパケット」(どちらも仮称)に改め、その配達は日本郵便が担うということです。

「クロネコDM便」とは

ヤマト運輸の「クロネコDM便」は、カタログやパンフレットといった販促物やダイレクトメールを全国へ送ることができる投函サービスで、利用者はヤマト運輸と契約している法人や個人事業主に限られています。
参照:ダイレクトメールとは

「ネコポス」とは

「ネコポス」は、小さな荷物を宅急便レベルの翌日配達でポスト投函するサービスです。
補償や追跡サービスがついているのが特徴で、メルカリを代表とする個人間取引サイトや通販などで数多く利用されています。

クロネコDM便については、2024年1月31日にそのサービスを終了し、日本郵便の「ゆうメール」を活用した新たなサービスとしてヤマト運輸が取扱いを開始するとのことですが、おそらくこれは、佐川急便の「飛脚ゆうメール便」(佐川急便が窓口として受け取った荷物を、日本郵便が配達するサービス)と同じ仕組みだと考えられます。

引用元:飛脚ゆうメール便 (佐川急便)

次に、ネコポスですが、2023年10月から順次その取扱いを終了し、日本郵便の「ゆうパケット」を活用した新たなサービスに移行されるとのことで、これもヤマト運輸が窓口になって預かった荷物を日本郵便の配送網で届けるということです。

ヤマト運輸と日本郵政は競合から協業へ

このたび、本格的協業に関する基本合意を結んだヤマト運輸と日本郵便ですが、20年ほど前はというと、実は「犬猿の仲」でした。

ヤマト運輸が日本郵政公社(当時)を提訴

2004年9月、ヤマト運輸は当時の日本郵政公社に対して、独占禁止法第24条に基づいた不公正取引の差止めを求め東京地方裁判所に提訴しています。

提訴理由は、ヤマト運輸の宅急便取扱店であったコンビニエンスストア「ローソン」に対し、当時の日本郵政公社が不当な利益をもって「ゆうパック」サービスの取次所となるよう誘引したというもので、ひとことで言ってしまえば、取扱店(荷物)の奪い合いです。

引用元: 日本郵政公社に対する不公正取引差止めの提訴について(ヤマト運輸)

また、信書※の取扱いについても、「公平公正な競争環境がない状態では特定の事業者の独占につながり、国民の利便性の低下を招きかねない」「貨物市場の公平公正な競争が阻害されている」として、ヤマト運輸はこれまでも日本郵便を批判していました。

引用元: 信書の問題点(ヤマト運輸HP)

※「信書」とは「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」をいう。
(郵便法第4条第2項)

物流業界の問題点

ところが、ヤマト運輸と日本郵便(当時の郵政公社)が荷物の奪い合いをしていたのは遠い昔のことで、ここ数年はECサイトやフリマアプリの利用頻度が急増し、市場には荷物が溢れかえっています。

理由は、スマートフォンの普及や、新型コロナウィルスの感染対策のため買い物において人との接触を避けた結果だと言われており、今後もECの市場規模は拡大することが見込まれています。

しかし、ネット通販の需要が急増する一方で、荷物の配送を担うトラックドライバーや物流業界での人手不足が大変深刻化しています。

また、2024年4月からはトラックドライバーの時間外労働規制(960時間上限)が適用されるため輸送能力はさらに不足し、しまいには「荷物を運べなくなる」(2024年問題)可能性までもが懸念されています。

そこで、ヤマト運輸は、宅急便の値上げや翌日配達地域を減らすことで賃金と労働環境の改善を、また日本郵便は普通郵便物の配達日数を延長するなどの対策に追われているのですが、それでも深刻な人手不足は一朝一夕に改善されません。

競合関係から協業関係へ

下の表は、国土交通省が情報公開している、令和3年度における宅配便取扱個数とメール便取扱冊数の一覧です。

引用元: 国土交通省 統計情報より

これを見ると、ヤマト運輸は宅配便で対前年比108.5%と伸ばしているものの、メール便(クロネコDM便)では99.8%と前年割れしています。

逆に、日本郵便は、メール便(ゆうメール)が対前年比101.4%に対し、宅配便(ゆうパック)では90.6%とかなり苦戦を強いられているのがわかります。

引用元: 国土交通省 統計情報より

また、各々の取扱構成比を比較してみると、ヤマト運輸は宅配便の比率が、そして日本郵便ではメール便の比率が突出しているのがわかります。

まとめ

これまでは、宅配便とメール便の双方で激しいシェアの奪い合いをしていた両社ですが、今回の本格的な協業に関する基本合意により、ヤマト運輸は非中核事業のクロネコDM便を切り離し、逆にクロネコDM便を取り込むことで日本郵便は郵便物配達の積載率を高めることができます。

ヤマト運輸と日本郵便という物流業界の大手2社が、物流停滞が懸念される「2024年問題」を見据え、競合を超えて協業関係に乗り出した今回の合意は、物流の今後を占う上で評価に値するものではないでしょうか。

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